犬と猫が食べてはいけない食べ物


前回は「危険な植物」についてご紹介しましたが、今回は「食べ物」です。

人間が食べても大丈夫だけど、犬や猫には危険な食べ物についてです。
食べ物については、植物よりはご存知の方が多いのではないかと思います。

chocolate

カカオ類

(チョコレート、ココアなど)

カカオ豆に含まれるメチルキサンチン類(カフェイン、テオフィリン、テオブロミンなど)が中枢神経を刺激します。特に犬はテオブロミンの代謝が遅いと言われているので注意が必要です。これらメチルキサンチン類をペットが摂取した場合、嘔吐、下痢、吐き気、激しい喉の渇きや尿意、心拍異常、痙攣、発作を引き起こし、最悪の場合死に至ることもあります。
昨今、ポリフェノールの健康効果を謳った高カカオチョコレートが人気となっていますが、こちらは普通のチョコレートに比べ、テオブロミンが2.3~4.5倍mカフェインが2.3~4.0倍含まれているという報告が出ています。(by 国民生活センター)ペットが食べないように、より注意が必要と言えますね。また、眠気防止効果を謳ったガムにもカフェインが含まれているので、キシリトール入りのガムではないからといって油断しないようにしましょう。
アメリカのポインズンコントロールセンターでは、「チョコレート、コーヒー、カフェイン」という項目で注意を促しています。カフェインは緑茶や紅茶などにも含まれます。チョコレートだけでなく、お茶やココアにも注意して下さい。
tamanegi

ネギ類

(玉ねぎ、長ネギ、ニラなど)やニンニク
ユリ科/ネギ属

玉ねぎに含まれるアリルプロピルジサルファイドが、ヘモグロビンを酸化しハインツ小体というものが形成されます。ハインツ小体が形成されると赤血球が弾力を失い壊れやすくなり、溶血性の貧血を引き起こします。
玉ねぎ、ニラ、ニンニクなどユリ科・ネギ属の植物が該当しますが、それぞれ有毒成分の含有量が違うため危険度が異なります。また、反応には個体差が大きく関係するため、一概にどの程度の量が危険という目安が出しにくいとも言えます。玉ねぎのエキスが出ているスープを飲んで異常をきたした報告例や、玉演技を食べても何も起こらなかったという場合もあり、致死量などはっきりしていません。ニンニクは、害虫予防や精力回復のために少量使われたりもするので、こちらも有害性や影響量に関しては不明です。何れにしても、大量に与えるようなことは厳禁と心得ておくべきでしょう。
また「危険な植物」の記事で、ユリ科の植物が猫にはよりダメージを与えると書いたように、こちらのユリ科・ネギ属の食べ物も、犬より猫に大きく影響を与えるようです。
grape

ブドウ、干しぶどう

ブドウやレーズンに含まれる有毒物質についてはまだはっきり分かっていませんが、犬や猫には有毒であると言われています。症例は主に飼い主からの報告によるもので、猫については不明な部分が多いようです。ブドウやレーズンにより、主に腎臓障害を起こし、既に何らかの健康不安を抱えたペットにはより大きな脅威となりうるので注意が必要です。玉ねぎなどと同様、摂取による影響や因果関係は解明されておらず、個体差により症状ので方もまちまちです。臨床例で有害性が実証されているので、避けるべき食材と言えます。
Avocado

アボカド

ペルジンという有毒成分が、果実、葉、種や樹皮にも含まれていて、犬や猫に嘔吐や下痢を引き起こします。大量に食べた場合に症状が現れますが、犬や猫より、鳥類やげっ歯類などの小動物に対する影響が強く発現するため、それらの動物には少量であっても危険。
不飽和脂肪酸を豊富に含み、コクのある美味しい果物ですので、食材として使っている飼い主さんも多いのではないでしょうか?メキシコや中南米の原産の植物で、ルシアンの古瀬のいるカリフォルニアでは、庭先にアボカドの木があって鮮やかな緑色の実を採ってきて黒くなるまで追熟させて食べるそうです。庭からアボカドなんて日本では考えられないシチュエーションですね。
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マカダミアナッツ

ハワイ土産でもらう、マカダミアナッツチョコレートは美味しいですが、犬にとっては大変危険な食べ物のようです。何しろ、チョコレートとマカダミアナッツのダブル攻撃ですからね。
マカダミアナッツは、衰弱、嘔吐、無気力、震えや異常な高熱を引き起こします。これは犬についての報告のみで、猫に関しては分かっていません。症状は摂取後12時間以内に発現し、48時間程度続くと言われています。
こちらも解明されていない部分が多いですが、避けたほうが賢明といえる食材のようです。
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キシリトール

キシリトールは、広く使用されている甘味料の一種で、ガムだけにとどまらず、キャンデーやクッキー、歯磨き粉にまで含まれています。犬にとってはチョコレートより危険と言われます。犬が摂取するとインシュリンを増加させ、低血糖や肝臓障害を引き起こします。主な症状は無気力、昏睡、運動障害など。ポケットやバッグに忍ばせたガムを飼い犬が盗み食いしないよう、十分に気をつけて下さい。猫に関する報告がないため、猫への有害性は不明です。
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アルコール

アルコールを含む飲み物や食べ物は、嘔吐、下痢、運動機能低下、中枢神経系の機能抑制、震え、アシドーシスなどを引き起こし、昏睡から死に至ることもあります。
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イースト生地

生のイーストは食べた後に胃の中で膨らみ、動物の消化管の中でガズを発生させたり増やしたりします。これは痛みの原因になったり、腸管破裂を引き起こしたりします。焼いた後のイースト生地はイーストが完全に発酵し終わっているので、ガスの発生などのリスクが下がります。ペットはおやつとしてパンをもらったりしますが、おやつのカロリーは1日の摂取カロリーの5〜10%以内に抑えないといけません。
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牛乳

ペットは乳糖分解酵素を持っていないので、牛乳や乳製品の摂取により下痢や消化器系の不調を引き起こします。
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生卵、生肉

生肉や生卵はサルモネラ菌や大腸菌などの細菌を含んでいる可能性があります。加えて、生の卵白に含まれるアビジンという酵素が、ビオチン(ビタミンB類)の腸管からの吸収を妨げるため、皮膚やコートのトラブルを招きます。

このほかにも、アワビやサザエなどの貝類で猫が光線過敏症になったり、
スルメなど乾燥させた海産物が胃の中で膨張して腸を通過できない、食道に詰まるなど
注意すべき食材がまだまだあります。

有毒素を含む訳ではないけど、マグネシウムの含有量が多いので泌尿器疾患の誘因となる可能性がある煮干や鰹節なども注意が必要ですし、
良い水を与えたいと思って選んだミネラルウォーターが、ミネラル分が多すぎて犬や猫には不向きという場合もあります。

大量に与えなければ大丈夫だったり、体質的に過敏でない子もいるでしょうが
致死量や直接の因果関係など、解明できていない面も多いので
事故報告例の上がっている危険な食べ物は、極力避けるべきと思っていた方が安全だと思います。


  • ルシアン代表・すばる動物病院院長。栃木県生まれ。酪農学園大学獣医学部卒、獣医皮膚科学会所属獣医師。薬の長期連続投与より、ナチュラルケや予防医学に力を入れたいという思いから、メディカルハーブ協会・ハーバルセラピスト資格も取得。飼い主さんの良きアドバイザーになれるよう日々勉強中。趣味はスキーとテニス、時々ゴルフ。