月別アーカイブ: 2015年6月

肝臓の数値の見方


こんにちは、動物看護師の金丸です。

動物病院にいって血液検査をしたときに「肝臓の数値が悪いね」と言われたことはありませんか。「RBC」や「PCV」などの検査項目が並んでいますが、肝臓が悪いときはどの項目を見ればいいのでしょうか。

今回は肝臓の数値についてお話します。

肝臓の数値ってなに?

肝臓の数値
血液検査では、GOT(AST)とGPT(ALT)とよばれる2つの数値をみて、肝臓がどのような状態なのかを確認します。GOT(AST)とGPT(ALT)は肝臓に含まれる酵素です。この酵素は、肝臓がダメージを受けると血液中に多く流れてきます。そのため、GOT(AST)とGPT(ALT)の数値が上がると、肝臓に何らかの異常がおきているということがわかるのです。

数値が上がったら危険?

数値が
数値が悪くなっているからすぐにお薬が必要かというとそうではありません。ウィルス感染やストレス、飲んでいるお薬の影響、老化などが原因で一時的に上がっている場合もあるため、少し期間を置いて何度か血液検査をすると正確な数値を把握することができます。

他に気をつけたい項目は?

気をつける
肝臓の数値が悪いと言われた場合は、こんな項目も一緒に確認しましょう。

Hb(ヘモグロビン)

赤血球の中に存在するタンパク質のことです。酸素を運ぶ役割があります。鉄分はヘモグロビンの元となるので少なくなると酸欠や貧血の症状が現れます。

MCV(平均赤血球容積)

赤血球1 個あたりの体積の平均がわかります。赤血球が小さいとMCV は低くなり、大きいとMCV は高くなります。

MCHC(平均赤血球ヘモグロビン濃度)

赤血球の中に含まれるヘモグロビン濃度がわかります。少なければ赤血球中のヘモグロビンが薄いということになります。

Alb(アルブミン)

アルブミンは血液の水分量を調整する役割があります。アルブミンが増えると血管内の水分を保持することができ、減ると血管内の水分が出ていきます。そのため、アルブミンが減るとむくみが発生します。また、肝臓でしか作られないため、このアルブミンが低くなると、肝臓に何らかの異常が出ていることがわかります。

Glob(グロブリン)

グロブリンは、肝臓のほかにリンパ節、腸管、骨髄などのリンパ装置と呼ばれる器官でつくられています。感染や外傷などで炎症が起こると、免疫システムが活性化するためグロブリン値は高くなります。

動物病院で検査結果を渡されたときに、項目の見方を覚えておくと出ている症状や治療が結びつくのでわかりやすいですよ。ぜひ参考にしてみてください。


  • 倉敷芸術科学大学 生命動物科学科卒業 / 日本動物看護協会 認定動物看護師 / 皆様の大切な家族が元気に過ごせるように、心を込めてサポートいたします。お気軽にご相談ください。趣味はガーデニングとアロマセラピー。好物はチーズケーキとかりんとうです。

夏は肝臓に注意!!


こんにちは、動物看護師の金丸です。

毎日、蒸し暑い日が続いていますね。
早くも暑さで食欲が落ちてきているというわんちゃん、猫ちゃん多いのではないでしょうか?
こんな蒸し暑い時期に労わってあげたいのが「肝臓」です。

暑さで体温調整がうまくできないと食欲が落ちてきます。
食欲が落ちてしまうと、タンパク質やビタミン、ミネラルなどの体を元気にする栄養が取れず、肝臓の働きが落ちてきてしまいます。

今回は肝臓が弱っているときにオススメな食事をご紹介します。

肝臓の働きって?

肝臓って
大きく分けると3つ働きがあります。

①「解毒」体に入ってきたアルコールや薬物などの有害物質を毒性のない物質に作り変えて、体外に排出します。

②「栄養素の合成・代謝・貯蔵」食事から取り込んだ栄養素を利用しやすいように合成、代謝貯蔵し、必要なときに血液中へ放出します。

③「胆汁の合成・代謝」古くなった血液からできた※ビリルビンを処理し、胆汁を合成、代謝します。胆汁は食べ物を消化するときに分泌されます。

※ビリルビンとは・・・寿命を終えて分解された赤血球の中の「ヘモグロビン」という成分が変化してできた物質

食欲と肝機能の関係

食欲と肝機能肝臓の働きというと、分解や解毒を思い浮かべますが、それだけではなく、上で説明したように、生きるために大切なエネルギーを作り出したり蓄えたりする働きをしています。 そのため、肝機能が低下すると、エネルギーが作り出されなくなり、疲労が大きくなります。

お勧めなのは良質なタンパク質

良いタンパク質
肝臓に問題が出てきた場合、食事面で大切なのは「良質なタンパク質」を摂ることです。少し前までは肝臓や腎臓に問題がある場合は、タンパク質の摂取を控えた食事が勧められてきましたが、最近では重要なのは「たんぱく質の量」ではなく「タンパク質の質」だと言われています。では、良質なタンパク質とはどのようなものでしょうか。

プロテインスコアが高い

通常、動物性のタンパク質は植物性のタンパク質に比べて利用効率が高いので、肉類をタンパク質源としたフードのほうが、肝臓や腎臓に対する負担は少ないと考えられます。
プロテインスコアの低い食物は必要量を満たすため多く摂らねばならず、それだけ未消化タンパクの割合が増えます。そのため肝臓が悪いという場合は、動物性タンパク質が多く含まれた食事をお勧めします。
また、体や臓器はタンパク質で作られています。悪くなった部分の修復や機能を回復するためにも質の良いたんぱく質が必要です。

抗生物質やホルモン剤などの薬剤を使用していない

鶏や牛を育てるときに「抗生物質」や「ホルモン剤」を使用していると、それはペットフードの中にも混入します。そのような薬剤が含まれたフードを食べると肝臓が無害なものに変えるために動き続けなければならず、肝臓に負担がかかってしまいます。
肝臓の働きが落ちているときは、原材料の質にも気を使いましょう。

ビタミンの補給も大切

ビタミン
肝臓にはビタミンを貯蔵するという働きもあるため、肝臓が悪くなるとビタミンが不足しがちです。ハーブのサプリメントなどでビタミンを補いましょう。

「DHA」や「EPA」も摂取しましょう

魚
肝臓は免疫力をつかさどる臓器です。肝臓の働きが悪くなると免疫力も低下してしまいます。青魚に含まれる「DHA」や「EPA」は免疫力を高めるといわれていますので、お魚を摂取するのもお勧めです。

オススメなフードとサプリメントは?

オススメjpg

グレインフリー

良質なタンパク質が多く含まれています。原材料もオーガニックなので安心です。
※魚はMSCのものを使用しています。
グレインフリー

健康オールスターズ

肝機能をサポートするダンデリオンルートが入っている「健康オールスターズ」がお勧めです。ふりかけ状になっているのでドライフードと一緒に摂取することができます。
※胆汁管の障害、重篤な胆のう炎と腸障害の場合は使用しない
健康オール

自然主義 ラメール

ラメールは青魚が主原料なのでDHAやEPAが豊富に含まれています。
ふりかけタイプのサプリメントです。毎日手軽にお魚を摂取することができます。
lamer

わんちゃん、猫ちゃんの食欲が落ちてきたという場合は、肝臓をケアするためにもぜひ取り入れてみてくださいね。


  • 倉敷芸術科学大学 生命動物科学科卒業 / 日本動物看護協会 認定動物看護師 / 皆様の大切な家族が元気に過ごせるように、心を込めてサポートいたします。お気軽にご相談ください。趣味はガーデニングとアロマセラピー。好物はチーズケーキとかりんとうです。

獣医師・小林のシンプル解説〜フィラリア症のこと〜


こんにちは、ルシアンの獣医師の小林です。
暑い日が続いておりますね。
既に私は夏バテ気味です。

これから更に暑くなるのかと思うと、恐ろしくて夜も寝れない日が続いておりますが、皆様はいかがお過ごしでしょうか?

さらに、この季節の風物詩、人もワンちゃんも悩ます蚊も飛び始めましたね。

ということで、かなりわざとらしい流れですが、今回は蚊が媒介する犬フィラリア症についてご紹介させていただきます。

※夏バテと虫さされの影響で、記事用の画像の用意が思うように進まず、文字ばかりの記事になってしまいました。申し訳ございません。

フィラリア症ってどんな病気?

犬フィラリア症は、犬糸状虫という、成虫になると10〜30cmくらいの白くて細長い素麺のような寄生虫が心臓や肺動脈に寄生することで起きる病気の事を言います。

では早速ですが、フィラリアの成虫の画像を見ていただきましょう。
ちょっと気持ち悪いかもしれませんが、、、

フィラリア成虫画像

こちらは以前、フィラリア症にかかってしまっていたワンちゃんから手術で取り出されたフィラリアの成虫です。

この子は手術により心臓からフィラリアを取り出すことで、一命を取り止めましたが、こんな大きな虫が心臓に寄生しているので、フィラリア虫体が血管を塞いでしまい、突然命を落としてしまう子も多いのです。

このようにフィラリア症は一度かかってしまうと命に関わるとっても怖い病気なのです。

また、慢性経過をたどる子も多くいて、その際の主な症状は、
・咳が出る
・なんとなく元気がなくあまり散歩に行きたがらない
・運動するとすぐに疲れてしまう
・お腹に水がたまる
・失神を起こす
などが挙げられます。

フィラリア症の予防はどうやるの?

蚊の出ている間、お薬を毎月1回飲ませて予防していただく方法が一般的ですが、最近は年に1回のお注射でフィラリア症予防が出来るものも出てきました。

それでは、何故、お薬を毎月1回飲ませる必要があるのでしょうか?
その点についてイラストを混じえて少し詳しくご説明致します。

①蚊に刺されてから0日目

フィラリアの幼虫を持った蚊に吸血され、その時に蚊の体内からワンちゃんの体内へフィラリアの幼虫が侵入します。この時のフィラリアの幼虫の大きさはまだ1mm程度で、ワンちゃんの身体に害はないと言われています。

フィラリアの解説図

②蚊に刺されてから30日後

このタイミングでフィラリア症予防薬を飲ませます。
犬の体内に入ったフィラリアは、最初は皮下組織や筋肉内にいるのですが、早ければ蚊に刺されて(犬の身体にフィラリアが侵入して)50日後には筋肉を貫通して静脈内に侵入してしまいます。この状態になってしまうと、お薬を飲ませてもフィラリアをやっつけることはできなくなってしまいます。

ですので、この前にフィラリアをやっつけなくてはなりません。また、フィラリアがワンちゃんの身体に入ってから30日を過ぎると、薬が効きにくくなります。
ですので、蚊に刺されてから30日以内にお薬を飲ませる必要があります。

③しっかりお薬を飲ませた!でもまだ油断は禁物・・・

お薬を飲ませた後にまだ蚊が飛んでいる場合は、また蚊に刺されてフィラリアがワンちゃんの身体に入ってきてしまう可能性があります。ですので、また30日後にお薬を飲ませます。このように蚊が出てるシーズンは月に1回、お薬を飲ませてフィラリアをやっつける必要があります。

フィラリア症予防薬は、蚊が出てから30日以内に飲み始め、その後、月1回ずつ飲ませていき、蚊がいなくなった1ヶ月後にお薬を飲んでそのシーズンの予防が完了となります。

④予防をしないと・・・

もしフィラリア症予防薬を飲ませなかった場合は、静脈内に侵入し、ワンちゃんの身体に入ってから70〜100日後には大きさが2〜4cmほどに成長し、肺動脈に到達し、そこからさらに成長し成虫となります。成虫の大きさはオスで10〜20cm、メスで20〜30cmにもなります。

⑤フィラリアの感染源に・・・

成虫になったフィラリアはワンちゃんの体内で赤ちゃんを大量に産みます。
そしてこのワンちゃんの血を吸った蚊が他のワンちゃんの血を吸うことで感染が広がっていきます。

ワンちゃん自身がフィラリアによって命を落としてしまう可能性があるだけでなく、フィラリアの感染源になってしまいます。

フィラリア症予防薬はフィラリア駆虫薬!?

フィラリア症予防薬は、ワンちゃんの身体に入ったフィラリアの幼虫を駆虫するお薬です。

蚊に刺されないようにするためのお薬でもなく、フィラリアをワンちゃんの身体に入らないようにブロックするお薬でもありません。

予防薬と呼ばれているので蚊に刺される前に飲んで、フィラリアを予防するというイメージがありますが、実際には蚊に刺された後に飲ませる必要があります。

なので、特に予防シーズン最後の投薬には注意しましょう。フィラリア症予防薬を最後に飲ませた後に、蚊に刺されフィラリアに感染してしまうと、次の春にはフィラリアが成虫になってしまうからです。シーズン最後はしっかり蚊がいなくなってから余裕を持ってお薬を飲ませてあげることをオススメ致します。

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フィラリア症はかかってしまうと、命に関わる怖い病気ですが、お薬を飲ませることで100%予防することが出来ます。大切な家族のためにフィラリアの予防をしっかりとしましょう。


  • ルシアン代表・すばる動物病院院長。栃木県生まれ。酪農学園大学獣医学部卒、獣医皮膚科学会所属獣医師。薬の長期連続投与より、ナチュラルケや予防医学に力を入れたいという思いから、メディカルハーブ協会・ハーバルセラピスト資格も取得。飼い主さんの良きアドバイザーになれるよう日々勉強中。趣味はスキーとテニス、時々ゴルフ。