こんにちは。動物看護師の金丸です。
第一回目は【下痢の原因】について解説していきました。
まだ記事を読んでないよ~という人はコチラ
第二回目は「寄生虫と下痢の関連性」についてご説明します。
「寄生虫なんて簡単に感染しないでしょ!」と思うかもしれませんが、
意外とわんちゃん・猫ちゃんの身近に潜んでいます。
下痢の分類
一口に下痢と言っても発生するしくみはそれぞれ違います。
この仕組みを理解していると、何で下痢をしているのかわかりやすいです。
大きくわけると
通過時間による下痢
浸透圧性の下痢
分泌性の下痢
浸出性の下痢
に分類されます。
通過時間による下痢は?
食べたものは蠕動(ぜんどう)運動によってゆっくりと腸を移動していきます。
蠕動(ぜんどう)運動が活発になりすぎると早く食べ物が通過してしまい、便が緩くなります。
食物アレルギーはこの仕組みで下痢になりますね(詳しい解説は次回へ)
蠕動(ぜんどう)運動ってなんだっけ?という人は【第一回】下痢の原因についてをお読みください。
浸透圧性の下痢とは?
腸内と腸外は細胞膜を通って水分が行き来します。腸内と腸外は同じ浸透圧が保たれていますが、マグネシウムを多く含む薬剤(便秘薬など)や消化できない糖(キシリトールや乳糖など)が腸内にあると、腸内に水分を多く引き込んでしまい下痢になってしまいます。
<マグネシウムを多く含む薬剤の場合>
牛乳をわんちゃんや猫ちゃんに与えるとダメだよ~というのは、乳糖が分解できず、
下痢になってしまうからなんですね。
同じようによく歯磨きガムにはいっているキシリトールも下痢の原因になってしまいますので、ペット用の歯磨きガムを買うときはパッケージを必ず確認しましょう。
(たま~に配合されているおやつを見かけます)
分泌性の下痢とは?
寄生虫感染で起こる下痢は分泌性の下痢になります。
細菌の毒素や寄生虫感染、ウィルスが原因で水分の吸収を阻害するため、
腸管内に水分が多い状態になってしまい、下痢をします。
また、うまく栄養も吸収できないため、痩せてきてしまいます。
浸出性の下痢とは?
腸の炎症が原因で腸の透過性が高くなり、腸管の中に水分が多い状態になります。
炎症によって吸収能力も落ちているので、水分を腸外に排出することもできなくなり、
下痢をしてしまいます。
寄生虫を追い出そう!!
ずっと寄生虫に居座られて、下痢をしていたら体は持ちません。
なので、体は免疫を働かせてどうにか寄生虫を追い出そうとします。
ところが・・・
この免疫が過剰に反応しすぎると炎症が引き起こされて、ずっと下痢が続いたり、お腹の調子が崩れやすいという状態になってしまうことがあります。寄生虫感染によって、分泌性の下痢だけでなく浸出性の下痢も引き起こされてしまいました。
下痢がずっと続くと組織や粘膜が損傷し、炎症がさらに酷くなったり、悪いものを吸収しないという能力がどんどん落ちてきてしまいます。
また、一度寄生虫に感染した子は他の微生物が悪さをする環境になりやすいというデータもあります。
このように複数の要因が絡んで下痢を引き起こしている場合があるため、「下痢をしてしまったからすぐに下痢止めを飲ませなくちゃ」ではなく、なにが原因で下痢になっているのかを探っていく必要があります。
寄生虫は駆虫薬でないと退治できません。「寄生虫が原因かも!!」と思ったら、動物病院で検査をして、駆虫薬をもらいましょう。
意外なところに潜む寄生虫
「でもめったに寄生虫なんて感染しないよね」と思っている
寄生虫は意外と身近に潜んでいます。
こんなデータを見つけました。
【約4割の犬が寄生虫感染の経験アリ。その半数超がマダニに感染!】
このデータによると約4割のわんちゃんが寄生虫感染の経験があるとでています。
また、その多くが散歩中やどこで感染したのかわからないと回答がありました。
回虫や条虫、ジアルジアなどは感染したわんちゃん、猫ちゃんの便にまぎれています。
草むらの匂いを嗅いでいると思っていたら、他のわんちゃんの便を匂っていたなんてこともあります。
特にこのジアルジア、水の中でも生きていけるので、
なんてことも考えられます。
「でもうちは猫だから安心」と思っている
寄生虫の中には、蛇やネズミ、カエルを介して猫ちゃんに感染するものもいます。
特にノラ出身の猫ちゃんであれば、ネズミやカエルなどを食べて感染することが考えられますし、ちょっと外に出たときにカエルなどと遊んで感染してしまうこともあります。
毎年駆虫薬を飲ませたほうがいいの?
駆虫薬といってもやっぱり薬です。副作用もありますし解毒にも時間がかかります。下痢をしたからすぐに駆虫薬を飲むのではなく、1度動物病院に行って検査をして、感染しているのであれば飲むようにしましょう。
今回は下痢の分類と、寄生虫感染と下痢の関係についてお話しました。
仕組みがわかっていると、動物病院で説明されたときもわかりやすいと思います。
ぜひ参考にしてくださいね。
次回は「食物アレルギーと下痢の関係性」と「勉強会でスタッフから出た疑問」を解説していきます。