中国以外でもスーパー耐性菌発見で今後の医療は?


1月10日の小林先生のブログは
最強の抗生物質でも殺せない細菌」という
抗生物質の過剰使用に関する警告が話題となっていました。

獣医師として、抗生物質の投与には深く関わっていますから、
関心も深いのだろうと思います。

私は、アメリカのペットフードの安全性について活動している
Susanさんのブログを数年前から読んでいます。
メルマガの購読も登録しているので、時々メールでお知らせが届きます。

今日、タイムリーに、小林先生の記事と同じ内容のメルマガを受け取ったばかりで
Antibiotic Resistant Gene a Concern for Pets and Peopleという投稿を読みながら
少し興奮気味にこの記事を書いています。

もう一度おさらいしてみますが
世界最強と言われるコリスチンという抗生物質があります。
そのコリスチンですら殺すことのできないスーパー耐性菌が
中国の養豚場で発見されました。

昨年の11月18日にイギリスのThe Lancet Infectious Diseaseという医学雑誌に
中国で発見されたこの耐性菌はMCR-1という遺伝子を持ち、
いとも簡単にその耐性遺伝子を一般の細菌にも転写してしまうという報告が載りました

このスーパー耐性菌が全世界に広がったら、
抗生物質の使用で炎症を食い止め、命を救っている医療現場は大混乱に陥ってしまいます。

この中国で耐性菌が発見されたという記事は、
今や畜産大国となった中国の養豚、養鶏の現場で
抗生物質の過剰使用を考え直して適正な使用をしていかないと大変なことになるよ!
という警告の記事だったわけですが
思いの外早いスピードで、すでに南アジア、アフリカ、ヨーロッパの
少なくとも10カ国で同じ遺伝子を持つ耐性菌が見つかり
実はカナダでも発見されていたということがわかりました。

日本やアメリカではまだ発見の報告は無いようですが、
(そもそも日本の中央官庁でこれを問題視しているかどうか分かりませんが)
カナダでも見つかっているのであれば、いつどうなるかは全く分かりません。
EUはすでにガイドラインの更新を行ったようです。(2016.1.11)

私はどうも薬が嫌いで、何とか他の方法で対処できないか、と
いつも考えてしまうのですが、
抗生物質もステロイド剤も、適正に使用されれば本当に素晴らしい薬です。
抗生物質発見以前の世界に逆戻りしたら、感染症の猛威に怯える日々が待っているということになります。

「念のため抗生剤も出しておきました」という人間の医療現場も
早く太らせて感染症も防ぐたために飼料に抗生物質添加の畜産現場も
使用法を改めないといけない時期に来ているのかもしれません。

pandemic

今回のSusanさんの記事
Antibiotic Resistant Gene a Concern for Pets and Peopleは、
また違った切り口からのツッコミがあって面白かったのですが
彼女の見解は

コリスチンは家畜及び獣医療現場で特に広範囲に使用されている抗生物質である→

中国は世界一の養豚、養鶏大国で、大量のコリスチンを家畜に投与している→

コリスチンは腎臓及び尿路への副作用がある→

アメリカには中国産のペットのジャーキーが多く出回っている→

中国産のジャーキーがペットの病気や死と関連しているのではないか

と言うものです。

日本のペットフード安全法では、中国産の原料を使っていても
日本の工場で製造していれば『国産フード』と言っても問題ありません。

コリスチンが残留しているかもしれない中国産原料が
多分飼い主さんが”安全性”を期待して買い求める『国産フード』に使われていたら
裏切られた気持ちになりませんか?

そして、それが原因で小さな家族が病気になったり、死んだりしたら?
悲しみを通り越して、怒りを感じるかもしれません。


  • 現在、カリフォルニア州サンタモニカで娘と二人暮し中。アニマルシェルターレポートや、アメリカのオーガニックの現状、ペットフード・ペット事情などを発信しています。電子書籍「本当は怖いペットフードの真実』がRCFパブシッシングから出版されました。 メディカルハーブ協会認定/ハーバルセラピスト、日本成人病予防協会認定/健康管理士一般指導員、ペットロングライフカウンセラー。 趣味は書道と植物のスケッチ、手作り化粧品やハーブのチンキ作り、ヨガと瞑想。