獣医師・小林のシンプル解説〜フィラリア症のこと〜


こんにちは、ルシアンの獣医師の小林です。
暑い日が続いておりますね。
既に私は夏バテ気味です。

これから更に暑くなるのかと思うと、恐ろしくて夜も寝れない日が続いておりますが、皆様はいかがお過ごしでしょうか?

さらに、この季節の風物詩、人もワンちゃんも悩ます蚊も飛び始めましたね。

ということで、かなりわざとらしい流れですが、今回は蚊が媒介する犬フィラリア症についてご紹介させていただきます。

※夏バテと虫さされの影響で、記事用の画像の用意が思うように進まず、文字ばかりの記事になってしまいました。申し訳ございません。

フィラリア症ってどんな病気?

犬フィラリア症は、犬糸状虫という、成虫になると10〜30cmくらいの白くて細長い素麺のような寄生虫が心臓や肺動脈に寄生することで起きる病気の事を言います。

では早速ですが、フィラリアの成虫の画像を見ていただきましょう。
ちょっと気持ち悪いかもしれませんが、、、

フィラリア成虫画像

こちらは以前、フィラリア症にかかってしまっていたワンちゃんから手術で取り出されたフィラリアの成虫です。

この子は手術により心臓からフィラリアを取り出すことで、一命を取り止めましたが、こんな大きな虫が心臓に寄生しているので、フィラリア虫体が血管を塞いでしまい、突然命を落としてしまう子も多いのです。

このようにフィラリア症は一度かかってしまうと命に関わるとっても怖い病気なのです。

また、慢性経過をたどる子も多くいて、その際の主な症状は、
・咳が出る
・なんとなく元気がなくあまり散歩に行きたがらない
・運動するとすぐに疲れてしまう
・お腹に水がたまる
・失神を起こす
などが挙げられます。

フィラリア症の予防はどうやるの?

蚊の出ている間、お薬を毎月1回飲ませて予防していただく方法が一般的ですが、最近は年に1回のお注射でフィラリア症予防が出来るものも出てきました。

それでは、何故、お薬を毎月1回飲ませる必要があるのでしょうか?
その点についてイラストを混じえて少し詳しくご説明致します。

①蚊に刺されてから0日目

フィラリアの幼虫を持った蚊に吸血され、その時に蚊の体内からワンちゃんの体内へフィラリアの幼虫が侵入します。この時のフィラリアの幼虫の大きさはまだ1mm程度で、ワンちゃんの身体に害はないと言われています。

フィラリアの解説図

②蚊に刺されてから30日後

このタイミングでフィラリア症予防薬を飲ませます。
犬の体内に入ったフィラリアは、最初は皮下組織や筋肉内にいるのですが、早ければ蚊に刺されて(犬の身体にフィラリアが侵入して)50日後には筋肉を貫通して静脈内に侵入してしまいます。この状態になってしまうと、お薬を飲ませてもフィラリアをやっつけることはできなくなってしまいます。

ですので、この前にフィラリアをやっつけなくてはなりません。また、フィラリアがワンちゃんの身体に入ってから30日を過ぎると、薬が効きにくくなります。
ですので、蚊に刺されてから30日以内にお薬を飲ませる必要があります。

③しっかりお薬を飲ませた!でもまだ油断は禁物・・・

お薬を飲ませた後にまだ蚊が飛んでいる場合は、また蚊に刺されてフィラリアがワンちゃんの身体に入ってきてしまう可能性があります。ですので、また30日後にお薬を飲ませます。このように蚊が出てるシーズンは月に1回、お薬を飲ませてフィラリアをやっつける必要があります。

フィラリア症予防薬は、蚊が出てから30日以内に飲み始め、その後、月1回ずつ飲ませていき、蚊がいなくなった1ヶ月後にお薬を飲んでそのシーズンの予防が完了となります。

④予防をしないと・・・

もしフィラリア症予防薬を飲ませなかった場合は、静脈内に侵入し、ワンちゃんの身体に入ってから70〜100日後には大きさが2〜4cmほどに成長し、肺動脈に到達し、そこからさらに成長し成虫となります。成虫の大きさはオスで10〜20cm、メスで20〜30cmにもなります。

⑤フィラリアの感染源に・・・

成虫になったフィラリアはワンちゃんの体内で赤ちゃんを大量に産みます。
そしてこのワンちゃんの血を吸った蚊が他のワンちゃんの血を吸うことで感染が広がっていきます。

ワンちゃん自身がフィラリアによって命を落としてしまう可能性があるだけでなく、フィラリアの感染源になってしまいます。

フィラリア症予防薬はフィラリア駆虫薬!?

フィラリア症予防薬は、ワンちゃんの身体に入ったフィラリアの幼虫を駆虫するお薬です。

蚊に刺されないようにするためのお薬でもなく、フィラリアをワンちゃんの身体に入らないようにブロックするお薬でもありません。

予防薬と呼ばれているので蚊に刺される前に飲んで、フィラリアを予防するというイメージがありますが、実際には蚊に刺された後に飲ませる必要があります。

なので、特に予防シーズン最後の投薬には注意しましょう。フィラリア症予防薬を最後に飲ませた後に、蚊に刺されフィラリアに感染してしまうと、次の春にはフィラリアが成虫になってしまうからです。シーズン最後はしっかり蚊がいなくなってから余裕を持ってお薬を飲ませてあげることをオススメ致します。

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フィラリア症はかかってしまうと、命に関わる怖い病気ですが、お薬を飲ませることで100%予防することが出来ます。大切な家族のためにフィラリアの予防をしっかりとしましょう。


  • ルシアン代表・すばる動物病院院長。栃木県生まれ。酪農学園大学獣医学部卒、獣医皮膚科学会所属獣医師。薬の長期連続投与より、ナチュラルケや予防医学に力を入れたいという思いから、メディカルハーブ協会・ハーバルセラピスト資格も取得。飼い主さんの良きアドバイザーになれるよう日々勉強中。趣味はスキーとテニス、時々ゴルフ。